擬態考「基底材の自立」


 深沢の作品の素材である和紙は不思議な素材だ。それは表面でありながら、それ自体の厚みを持つ。

 それは一方で存在としての強度を持たず、他方で無であるのでもない。和紙という素材自体が存在と無の形而上学の彼方にその身を置いているのだ。

 だが、和紙を素材とした作品の中でも、深沢の作品群はとりわけ特権性を持たない衰弱体としての印象が強いものだ。それは深沢が長いこと「表面」という概念にこだわってきた作家だからであろう。

 表面は存在の単なる現れとして、西欧の形而上学では貶められてきたものだ。現象学は存在に対して表面を復権させるものだった。その意味で、深沢の作品群は厚みを所有するにいたった現象学だといえるだろう。

桜井洋(早稲田大学教授・社会学)


擬態考「処女の受胎」
(紙、麻、木炭等)
180×90×10

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